Dissonance

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 どれくらいの時間が流れたのか、蜂蜜のような甘い一時は朝日によって終わりを告げる。リリアンナはアーロンの肩にもたれながら蕩けるような表情で呟いた。 「もう、一年にもなるのですね」  アーロンの瞳がリリアンナを映す。 「戦争の終止符は打たれた。初めての敗北の代償として得られた平和。でも失ったものも多かった。多くの領土を奪われ、我々の人権さえ踏みにじられた。すべてはあの男のせい」  俯いて紡がれた言葉は震えていた。泣いているのか、怒っているのか、アーロンには知るすべはない。  重い沈黙が流れる。やがて、リリアンナは掠れた声で問いかけた。 「私は間違っていたのでしょうか、かつて彼を愛し、心の底から信頼していたことは」  返事はない。 「あなたはこんなわたくしを軽蔑しますか? 見る目のない馬鹿な女だと」  沈黙。痺れを切らしたリリアンナは声を低くして続けた。 「何か答えて」 「……もし」 「……?」 「もし、ライザックが裏切り者ではなかったとしたら、あんたはどうする?」  リリアンナは目を見開く。と同時に笑いが込み上げてきた。 「質問を質問で返すなんて」  リリアンナは疲れたような表情でアーロンを見上げる。 「あなたってやっぱりおかしい」  一国の王女の面影はなく、まるで少女のように笑い転げるリリアンナ。アーロンはそれを黙って見ていた。やがて涙を吹き、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、アーロンから離れた。
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