Dissonance

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「そうですね……ライザックが裏切り者でない可能性はわたくしは考えられません」  なぜ?と首を傾げる。 「勿論始めはそんなこと信じていませんでした。ですが、今は考えてはいけないと思っています。考えてしまえば、処刑しようとした父はもとい、何の罪もない、むしろ我が国に尽力してきた善良な市民を殺したあなたが悪となってしまうからです。わたくしはそれを望んでいません。それに彼ではないとしたら別の裏切り者が軍の中にいる可能性も出てくる。市民たちは、皆彼らに命を預けるのです。疑心暗鬼になりながら、怯え暮らすことに意味はない」 「それが答えでいいんじゃないか」 「え?」  海のような碧色の瞳を瞬く。 「あんたは自分の立場も責務も分かっている。その上で過去も受け止めている。あんたは何を見ている? 今か、それともまだ過去にすがるか」  まっすぐな金色の瞳。リリアンナは息を呑んだ。しなやかな白い手で青年の顔を包む。 「……当たり前のことだったのですね。彼はもう過去でしかない。現在(今)はあなた」  滑るように、リリアンナの細い指が頬から傷へと触れる。そして彼女は決意したように言った。 「お願いがあります」
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