Dissonance

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 口にするだけでも疲労を感じる。だけど言わなければいけない。 「用途の通りその製法は酷くおぞましいものでありました。虫を何匹か捕まえて壺などの入れ物に入れて待つのです。最後の一匹になるまで。そしてその残った最も強きものを、飲食物に交ぜるなどして呪いたい相手の体内に入れる。……その効力はあまりに強く、法で禁じられるほどであったそうですよ」  白いもやが足元から広がる。霧だ。  まるで何者かがこれ以上先に進むなと警告しているようだ。それでも彼女は歩みを止めない。王女として、人間として。 「わたくしは……蟲毒」  少しだけ、華奢な肩が震える。 「世界という壺に囚われ、周囲を蹴落として。そして私はここにいる」  そしてアーロンを見上げ、 「わたくしは、私は毒なんです」  漏れたのはため息にも似た吐息。アーロンはリリアンナとは目を合わせず、数歩先に進むと、立ち止まり、不安気に首を傾げるリリアンナに視線を向ける。  金色の光が気怠げに揺れる。 「お前がしたいのは、いや、するべきはそんな話ではないだろう?」 「え?」
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