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王はライザックを横目で見──小さく笑った。
「お前はもう、用済みだ」
頭を殴られたような感覚。信じていた者に裏切られた悲しみ。頼るべき者を無くした喪失感が溢れる。
(リ……リアンナ……。そうだ、王の娘のリリアンナなら説得してくれる)
そう期待を込めて彼女を探す。そして王宮の中にいたリリアンナと目が合った。腰まである長い艶やかな黒髪、すらりとした手足、淡い桃色の頬、そして整った顔。 彼女は二ヶ月前に別れた時から、何も変わっていなかった。──冷えきった瞳以外は。
(……え?)
リリアンナは潰された虫でも見るかのような目でライザックを眺め、ふいと踵を返した。
(君も、同じなのか……?)
絶望。体の中が空っぽになった気がした。
「魔導隊準備!」
どこか遠いところで声がする。
すべてがどうでもよくなっていった。
世界から色が消える。
「放て!」
赤々とした炎が、舐めるように十字架を浸食していき、ライザックを焼こうと襲いかかる。彼は抵抗しなかった。
(熱い)
体の中が熱を帯びてくる。
(熱い熱い熱い)
炎の熱さではない。空っぽの器が黒いもので満たされていく感覚。そして、それは現れた。
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