Dissonance

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 大きな口には鋭く尖った歯が並んでいる。アーロンはそれを目の当たりにしても動じることなく、ただ見つめていた。  静かな色を湛える金色の隻眼に火竜は恐怖を覚えた。全身が危険信号を発信している。だが止まるにしてはもう遅すぎた。火竜は本能のままに、炎を吐いた。  アーロンは空中に手を翳す。空間が歪み、一振りの剣が形を現した。アーロンはそれを掴み、火竜に向かってかける。そして驚くべき所業をみせた。 「炎を……斬った?」  火竜の吐く炎がまるで紙のように綺麗に二つに切り裂かれていく。  形なきものに力を加える。それは一流の魔術師でもできることではない。その場にいた誰もがアーロンの力をその目で感じることとなった。  一刀両断。自らの最大の武器を失った火竜は、成す術なくアーロンの剣の前に倒れることとなる。 「……流石、英雄サマだな。どこかの誰かとは違うぜ」  誰かが呟いて、乾いた笑いが広がった。  周囲の同胞が疲労や怪我で疲弊しているのを他所に、アーロンは火竜の死体に近づき、パチンと指を鳴らす。すると鱗の一枚が剥がれ、アーロンの手に収まった。 「彼女へのプレゼントか?」  レティがからかうように言った。アーロンはこくりと頷く。 「火竜の鱗はいい素材になる。魔よけにもよく使われる」 「へー。よく知ってんな。まあ、アクセサリー屋とかに行くのは仕事外にしろよ。じゃなきゃ、団長みたいに裏で悪口言われるぜ」
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