第1章

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   思えば、勇人はそうした事を言う時にしか、「好き」って言葉を発していなかった。 「俺は若葉が好きだから、メールの返信が遅いと心配になるんだよ」 「俺は、若葉があんな服装素してるのが好きなんだ」  私に何かを要求したり、禁止事項を作る理由として、「好き」って言葉が存在してた気がする。  男の人って、「好き」って言葉をあまり言いたがらないっていう。だけど、束縛の為の言葉として「好き」を使われてたと思うと気持ちは滅入る。  それがどんなに、勇人の愛情表現だと思おうとしても。  結局は、それで衝突しちゃってて、今も関係の修復は出来てなくて、終わらせようって考えてる。 「若葉ちゃん?」  その関係を終わらせたとしたって、その先の私に何があると言うのだろうか。  マスターとの関係が、どうにかなったりしないだろうし。  ましてや、あの人の愛情が私に注がれる事はあり得ない。
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