第1章

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   そんな独り言が思わず出ちゃった時には、駅前まで来ちゃってた。  梅雨入り前。  だけど、梅雨入りを思わせるような、冷たい雨が降り始める。その雨が、落ち込んだ気持ちを更に貶める。  酔っ払いのおじさんが、何か叫んで天を仰ぐ。 「あの人も、何かあったのかな」  普段なら、そんな酔っ払いを軽蔑しそうだけど、今の私はその気持ちが分かる気がする。  私だって、何なら叫びたいくらい。  さっきまで、色々と考えててたのだって、勇人との事を考えないでいる為。考えちゃうと、気持ちが塞ぎ込みそうだから。  雨は、そこまで強くない。  急いで帰れば、濡れないで済みそう。だけど、真っ直ぐに帰りたくない気分。 「でもなぁ、マスターのところは行けないよねぇ」  今の精神状態で行ったりしたら、それでマスターを前にしちゃったら。  ヤケ酒した上に、言っちゃいけない事を言いそう。
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