第1章

29/40
前へ
/40ページ
次へ
           four    いつも通りの店内。  例によって他にお客さんはいなくて、テーブル席に岡田さんがいる。その場から、カウンターの向こうのマスターと話してる。  だったら、カウンターで飲めばいいのにね。  あの席のあの場所がお気に入りだから、決まってあそこに座るんだろうけど。  そんな二人は、私に気付かず会話を続けている。 「だからな、昔俺が空手道場の師範だった頃の話しだよ」 「それは、何年前の事ですか」 「そうさなぁ、三十年ほど前の事かな。とにかく喧嘩の勝負は、最初に手を出す直前に決まっているんだよ」  今日の職歴は、空手の師範なんだ。  思い返してみると、私が知るだけでこの人の職歴は三十を超えている。それだけ、私は夜にここに来ているって事になる。  そして岡田さんの職歴は、どれが嘘でどれが本当なのか。  マスター曰く、全部が嘘みたいだけど。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加