第1章

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   私としても基本的には信じてなくて、マスターはマスターで信じていないけど、その話しに付き合う事を楽しんでいそう。  その気持ちが、何となく分かっちゃう。  だって、これだけの嘘つきならば、普通は「オオカミ少年」のような事になりそう。だけど、岡田さんをそんな風には見る事が出来ない。  単純に、この人は憎めないんだよね。  おじいちゃんの、可愛らしい悪ふざけって考えれば、数々の職歴も次に何が来るかって期待しちゃう。  そこで、マスターが私に気付いてくれた。 「あっ、申し訳ない。若葉さん、いらっしゃいませ」  岡田さんは、喧嘩の武勇伝の腰を折られたのに、どこか嬉しそうに自分の席で座り直してる。  何だか、生け贄にされそうな気分。  でも、今の沈んだ心境では、そんな風に明るい雰囲気で出迎えてもらえて助かった。  それに今日の事を話すのに、自分からは言いにくい。
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