第1章

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   だけど、岡田さんからきっかけをくれたら、マスターにも話しやすい気がする。  さっそく、岡田さんが絡んできた。 「若葉ちゃん、最近元気が無いようだが」 「まぁ、元気は無いですよ」 「まさか、彼氏と喧嘩でもしたか」 「岡田さんには、関係ないでしょ」 「おやおや、図星みたいだったな。どうだい、人生の先輩が相談に乗ってやろうか?」 「結構です」  ここまでの会話が出来るほど、岡田さんとも仲良くなっている。それだけに、こんな展開を予想してその通りになってたりした。  今のやり取りを、マスターも聞いていただろう。  これで、話すきっかけが出来た。  そう思えたら、岡田さんはお役御免となる。だから岡田さんに背を向けて、カウンターの向こうのマスターへと向かい合う。  穏やかで、優しいいつもの笑顔。  それを見るだけで、重くなってる気持ちがシャボン玉のように軽くなる。
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