9人が本棚に入れています
本棚に追加
だからって、完全に気が晴れたりしないのは、そのシャボン玉が割れずに残ってるから。
やっぱり本質的な部分で、今日の勇人の事が頭の奥底にこびり付いている。
マスターは、注文していないのに、私にカクテルを出してくれた。
「あの、これ……」
「本日は、少々落ち込んでいる様子ですので、口当たりのいいものがいいかと。ただしこちらは、飲みやすいのでゆっくりとお楽しみください」
「はい、気を付けます」
淡いピンクのカクテルは、微炭酸の気泡がグラスの底から立ち昇る。そして可愛らしい見た目に加えて、甘い香りが気持ちを和らげてくれた。
マスターは、私のやけ酒を見透かしたよう。
先読みしてクギを刺してくれたので、落ち込んだ気持ちのままにカクテルを飲まずに済んだ。
ゆっくりと一口含んで見る。
マスターの言った通りで、口当たりのいい優しい味わいのカクテルだった。
最初のコメントを投稿しよう!