第1章

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朝起きると…いや、もう午後の3時。 いつの間にか布団が掛かっている。 変な体勢で寝ていたからだろうか。 体が重い。 ソファの周りを見渡すと積み上げられていたはずの資料や本がなくなっており、整然としている。 どういうことだ?と春は少し焦る。 大切な資料はどこに行ってしまったのだろう。 すると、奥から掃除機の音が聞こえる。 春はその方向へ歩いていく。 『清香!資料は?』 「ある。捨てたら春がうるさいだろうから、置いてある。」 少し安堵する。 「それよりも部屋、綺麗になったでしょ!少しは感謝して。」 別に頼んでもないのにと思いながらも 『ん、ありがとう。』 と素直に感謝した。 「昼食も作ってるから食べてね。わたし、もう少し掃除するから、用意は自分でして。」 『わかった。』 と昼食を用意しに台所へ向かう。 その時ふと昨日のことを思い出した。 掃除機の方向へ急いで逆戻りする。 『清香!昨日!』 「え?」 『まさか、覚えてないの?』 「わたし、なんかしゃべった?」 『しゃべった。』 「きゃああああああああああ。」 叫び声をあげる清香。 「忘れて、今すぐ!忘れなさい!」 『努力はするよ。』 と比較的真面目な顔で答えたつもりが… 「何笑ってんの!サイッテーー!」 と清香を怒らせてしまったようだ。 『でも、清香もいい加減学ばないとダメだよ。 酒飲んで私の部屋きたら、色々しゃべっちゃうんだから。 お陰で清香のあんなことやこんなことを知ってしまう …私の気持ちにもなってよ。』 わざとらしく頭を抱えてみせる。 「ちょっと、あんなことやこんなことって何?え、ちょっと!」 『あ、ご飯食べるねー。』 春は清香の叫びを無視して、もう一度台所へ向かう。 しかし、昨日の清香の泣きようは気になった。 いつもよりひどかった気がするし、今日の朝もなんだかんだで無理に元気そうに振る舞っている。 清香から出た「ヤリ捨て」というワードも気になる。 彼女はかなり真面目で潔癖、完璧主義なのだ。 そんなに簡単に体を許すことないはずなのに。 …まぁ、私には関係ない。 むやみに彼女の問題に介入するのもよくない。 春はそう考えて目を伏せた。
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