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「それで、やっと連絡先ゲットできてさ……」
「わぁ、やったじゃん!でも、どうして中学んとき告白しなかったの?」
両手を頬に這わせながら、キョトンとした表情で朱莉がそう尋ねる。
「ずっと好きだったんでしょ?
卒業式とか告白チャンスだよね?」
そう。
朱莉の言う通り、
好きになってから、いつかは自分の気持ちを伝えるつもりでいた。
だけど……
「カレね、彼女いたの」
サッカー部で、運動も得意
運動会でリレーの選手になれば必ず一位を取るくらい足も早い。
頭も良く、成績も学年で上から数える方が早い。
みんなの憧れの存在だったし、拓ちゃんに恋をしてる女の子は私だけじゃなかった。
だけど、
拓ちゃんは塾で知り合った別の中学の女の子と付き合っていた。
「一方的に好きって伝えてもよかったんだけど、……」
なんだか、それは違うような気がしたんだ。
当時のことを思い出しながら、一点をボーと見つめている私を
じーっと伺いながら、朱莉が呟いた。
「陽菜って優しいね」
ふわっと耳に入ってきた朱莉の優しい声とともに、子どもをあやすように微笑みながら私の頭をそっと撫でてきた。
「…え?」
優しい?
告白出来なかったことが、どうして“優しい”になるんだろう?
朱莉の真意が分からず目をパチクリさせる私を見ながら
朱莉がクスクス笑っている。
「でも、連絡先ゲットってことは、そのカレって…」
「うん、別れてたの。彼女とは…」
「よかったじゃん!これで遮るものなく、アタック出来るね」
別れた彼女のこと思うと喜んでいいものか分かんないけど、
それでも、やっと自分の恋が報われるかもしれないと思うだけで
幸せな気持ちで胸がいっぱいになるんだ。
「うんっ!
好きになってもらえるように頑張らなくちゃ」
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