9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、しぃ君。これは私が望んだ事なのかしら?」
「……さあね、まぁちゃん。俺にはさっぱりわかんないよ。ただ───臨んでやった事は明白だね」
I
目の前に広がる光景を視界に入れて、どれ程の時間が経ったのか感覚が麻痺し始めた。
それは時間のせいなのか、それとも鼻から脳髄を刺激する鉄分の臭いのせいなのか、そんなこともわからない。
けれど。
この光景は異常だ。本当に、どうしようもなく
───異端だ。
「……ごめんね、しぃ君」
なんで、謝るんだろう。
どうして、そんなに悲しい表情をするんだ。
お前は感情表現が苦手なはずじゃないか、そんなにも感情を出すことなんてなかったじゃないか。
他人の気持ちがわからない俺は、まぁちゃんの心境も。心持ちも。不可解というより不明解だった。
仮に───あくまでも仮として。
自分が、まぁちゃんの立場になったとしたら。
こんなに感情は出せはしないだろう。
すっぽり抜け落ちて、朽ち果てて、跡形もなく霧散して、無表情で無感動を貫いていたんだと思う。
……なんてね。
俺の何処に一体全体どうして、まぁちゃんの気持ちになれると言うのだろう。
劣悪にも程がある。贅言にも程がある。
「俺にはまぁちゃんの謝る訳がわからないけれど、謝るのは俺の方だよ。ごめんね本当に。───殺しちゃって、ごめんね」

最初のコメントを投稿しよう!