第2章

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「……あの」 「え?あ、ごめん」 見惚れていたことに文句を言われるかと思い、つい口から謝罪の言葉が出た。 「ほんと、ごめんね」 足のこともあったし、もう一度彼女に謝ってその場を去ろうとした。 「あっ…待って」 彼女が俺の腕をクイっと引く。 な、なんだ…? すると、彼女は スッと俺の前に立ち、手入れの行き届いた細長いキレイな指で、ジャケットのボタンに手をかけた。 「ごめんなさい」 ボタンに、彼女の持っていたバイオリンケースのストラップが絡みついたようで さっきの怪訝な表情とは一転 今度は彼女が謝りながら、ストラップを解いていった。 バイオリンを持っているってことは音楽科の子だよな… 「…音楽やってるんだね。俺、美術の方なんだ」 どうにか、彼女との繋がりの探そうととっさにそんな言葉が口をついて出た。 「…………」 だけど、彼女から返事はない。 「結城…龍也(ゆうきたつや)って言うんだけど…俺」 君は? と聞いても、やっぱり彼女は応えてくれない。 俺たちの横を通り過ぎていく新入生たちが、チラチラと視線を送る。 「…あ」 彼女のか細く出た声に気づき、自分の胸元に視線を落とした。 「すみませんでした」 一瞬だけチラッと俺の目を見ながら、彼女はそう呟くと 引き止める間も無く人混みの中へと消えていった。
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