第2章

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結局、彼女の名前を知ったのは入学式から数週後。 名前を知っても結局繋がりがないまま時間だけが流れていく中 それは、突然の出来事だった。 すぐそこまで夏が来ている過ごしやすい日々が続いていたある日 「おい!たつ! 今日飲み行くぞ!」 「はっ?」 突然の太一の突拍子のない誘い。 「ムリ。俺今日バイトだし」 「いや、代わってもらえって!今日は本当に来い。来ないとマジでお前後悔するって」 太一にしては珍しく、いつもはここまで強引に誘ってきたりはいない。 太一の勢いに負けて、バイトのシフトを代わってくれる人がいることを願いながら、あらゆる人に電話をかけた。 幸い代わりの子がすんなり見つかり、 太一と一緒にとあるバーに行くことになった。 いつもなら客単価の安い居酒屋で、男ばかりでワイワイ騒げるようなところに行くのだけれど この日は 太一と二人きり 駅から少し歩いた細い路地にある高級感漂う出入り口のその感じにちょっと気が引けた。 「…おい、大丈夫かよ」 「大丈夫だって。やらしい店とかじゃねぇから」 ほんとかよ… 太一は、隙あらばキャバクラやらそういう店に俺を連れて行こうとしていた。 ゆっくりと太一がその店のドアを開ける。 その瞬間 高貴な空気感が俺たちを包んだ。 いつもの居酒屋のようながやがやした雰囲気は欠片もなく 優雅な柔らかい音楽と キレイな歌声がスッと身体に入ってきた。 タキシードを着たオールバックのボーイにテーブルに案内され席に着く。 周りの客も、 ダンディな気品溢れるおじさんや、高そうな宝石を身に纏ったどう見ても高貴な人たちばかり。
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