第1章

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私より 大きくて暖かくて、少し乾燥した大好きだった男の手が 私の手首をきつく握り ベットへと組み敷いていた。 「なんでこんなことっ…!」 「なんで?」 男は、自傷気味に微笑みながら私を見下ろす。 「お前が…嫌いだからだよ、芽衣子」 男の口から きらいだ という言葉が出てくるなんて夢にも思っていなかった私は 男の言葉に ひどく落胆し、虚しさという名の涙が溢れ出した。 「どうして……」 「お前が悪い。 俺から全てを奪ったのは、 お前だろう? だから、 今度は俺がお前の全てを壊してやる」 男はそう言うと 私の手首を握る自分の手に力を込めたあと 噛み付くようなキスを私に落とした。 初めてのキスは好きな人と。 初体験は、素敵な思い出になるようなところで。 女の子なら誰しもがそういうふうに思い描くだろう。 この出来事によって 私のその夢は 完全に打ち砕かれた。
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