第2章

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食堂へ向かおうと レンガ調で建てられた大学のキャンパスを進んでいくと よく晴れた秋空が 心地の良い風と 暖かい日差しを運んでくれる。 美術科の棟と食堂の間にある 芽衣子がいる音楽科の横を通り過ごそうと ふと目をやると 風がそよぐカーテンの隙間から バイオリンのリズムに合わせて優雅に佇む芽衣子の姿が見え 思わず魅入ってしまっていた。 リズミカルに弾む音楽と共に 揺れる芽衣子の黒髪がとても綺麗で…… 「あ。ネコ」 「え?」 太一の声に 我に返り、太一が指差すほうに目をやると 青い瞳をした黒猫が 音楽科の棟の隙間から顔を出していた。 …なんだ、本物のネコか 芽衣子のことを言ったのかと思った… 「最近、大学に入り浸ってるらさしいよ、あのネコ」 食堂の残飯狙いかな、 なんて笑う太一に声をかけた。
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