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スプリング・ストリートの中程に差し掛かった頃、マッシーは一軒の娼館の前で足を止めた。
ケバケバしい紫で大きく『蜜蜂の館』と書かれた看板が出ている。
「お、娼館の荒獅子様のお出ましかい」
そう言って馴れ馴れしく声を掛けてきたのは、ウェストがヒップより二周りは太そうな中年女であった。 賭場で”禿鷹”と恐れられるマッシーのもう一つの異名が”娼館の荒獅子”である。
「おう、ババア。来てやったぜ。ララーは空いてるか?」
「ああ、空いてるよ。なんなら私と二輪車してみるかい?」
「けっ、冗談は腹だけにしろよババア!」
蜜蜂の館の女主人に毒を吐きながらマッシーは二階へと上がっていく。
二階に上がったマッシーの前に一人の少女が踊り出してきた。
年のころは十代の後半といったところか。
ソバカスだらけの顔にクルクルと良く動く円らな瞳は愛らしいが、鼻は見事にペチャンコである。
口は大き目で下唇が分厚い。エラの張った五角形の顔はお世辞にも美人とは言えない。
「よう、ララー。来てやったぜ」
「嬉しい!」
ララーはそう言うとマッシーに跳び付き、胸に顔を埋めた。
どうやらこの娘がもっかのところ”娼館の荒獅子”のお気に入りのようである。
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