第1章:賭場の禿鷹

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 狭い室内に、10人近い男達があぐらをかいて車座になっている。  天井からぶら下がっているランプの灯りだけが部屋の中心を妖しく照らし出していた。  どうやら部屋は二階らしく、開け放たれたドアの向うに下り階段が続いているのがほの暗いランプの明かりで微かに確認できる。  酒気を帯びた赤ら顔の男が多いが、そのわりには恐ろしく座は静かである。  それぞれ酒を片手に、あるいは鶏肉を頬張りながら、座の中心に血走った目を走らせている。 「さあさあ、しみったれてないで、どどんと張りましょうや」  階段の反対側に座っている小太りの中年男が作ったような笑顔で陽気な声を出した。  その声に反応するように各々が座の中心に向って銀貨を出す。  ある者は1枚、ある者は2枚、小太り男の掛け声も空しく、皆張りが小さい。 「あちゃー。みんな銀貨ですか? 男ならひとつ金貨でばばんと行こうじゃありませんか」  そう言って煽る小太り男の傍には、山のように金貨が詰まれている。  小太りの声に釣られるように、対面に居る大柄な剣士らしい男が金貨を出す。  それをその男の右隣にいた頬に傷のある男が止める。 「よせよせ。ツイてる野郎が親の時は大きく張らないのがセオリーだ」  頬傷の男が言うと、剣士風の男は出しかけていた金貨を引っ込めた。 「ははは、助言はなしにしてくださいな。それに、そろそろ私もツキが落ちる頃合かもしれませんよ?」 「うるせぇ。少しは黙れ」  頬傷の男に言われて、さすがに小太りの口が閉まる。
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