3章:中庭の奇行士

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 シルバスタ王マクダエルとその家族が生活する王宮の中庭に、小鳥のさえずりが聞こえている。  ポカポカとした陽気が、雪国に待望の春が来たことを告げていた。  その穏やかな陽光を浴びながら、マッシーは大きな庭石に腰掛けている。  マッシーの隣に座っているのはまだ7~8歳の少年であった。  名をボッキーというこの少年、作春から王宮の補修に来ている宮大工の息子なのだが、本人は魔法剣士に憧れていて、常に少年用の短い木剣を持ち歩いている。  ほとんどの大人が相手にしてくれない中で、マッシーだけが近衛兵という職務を無視して遊んでくれるので、自然と仲良くなっていた。 「師匠の番だよ、早くやってよ」  ボッキー少年がマッシーをせかすように言う。  知らないうちにマッシーはこの少年から師匠と呼ばれるようになっていたが、何の師匠かは不明である。  もしかしたら言っている本人にもわからないのかも知れない。 「ふむ」  マッシーは数メートル前方の地面をじっと睨みながら、おもむろにハナクソをほじくりだした。  ほじくりだしたハナクソを丸め、そのまま親指と人差し指でピンと弾く。   弾かれたハナクソは4mほど向こうの地面に落下したあと、コロコロと転がり、地面に突き立てられた木の棒の5cmほど手前で止まった。
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