第1章:賭場の禿鷹

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 小太りの左隣に座っている痩せた長髪の男が、座の中心に置いてある三つのサイコロを手に取って2、3度振ってから放り投げた。  出たサイの目は2、5、6。 「うん。13なら悪くないね。こりゃ隣にツキが移っちまったかね?」  小太りがニコニコしながら言う。  小太りを無視して今度は長髪男の更に左隣の男がサイを振る。  4、4、6。 「おっ、今度は14か。こりゃまいったね」 「いい加減黙れや、コラ!」  頬傷の男がジロリと小太りを睨む。  さらに二人ほどがサイを振り、ようやく頬傷の男の番になった。  頬傷の男の目は3、5、6。  悪くない目だが、頬傷の男はニコリともしない。  3つのサイの目の合計が大きい方が勝ちという単純な賭博である。  勝負は”親”と”子”の勝負で、親は持ち回りになっている。  親が落ち目の時は子方は大きく張るし、逆に親がツキ目の時は張りを控えるのがセオリーである。  ここまで子方の目は総じて悪くない。が、目の良さとは裏腹に皆張り額が小さい。
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