第1章:賭場の禿鷹

4/12
前へ
/156ページ
次へ
 一巡してようやく親である小太りの番になった。 「ゾロ目ゾロ目、頼みますよっと」  小太りがそう言いながらサイを放る。  目の大小とは別に3つゾロ目が出れば無条件に勝ちになる。  小太りの振ったサイが座の中心に転がり落ちる。  一つ目が1、二つ目も1。  最後の三つ目は、一旦1になりかけたが、最後にもうひとつ転がって2で止った。 「あちゃー! 4じゃ全敗だよ。こりゃあ本当にまいった」  小太りが大袈裟に頭を抱える。が、その目は楽しそうに笑っている。 「クソっ……」  6、6、4で16を出した剣士風大男が悔しそうに言うと、隣で頬傷の男が小さく舌打をした。  子方が勝負に出た時に強い目で勝ち、自分の目が弱い時は子方が張りを控えている。  小太りにとっては理想的な展開である。   「さて、負けたからには仕方が無い。親変えですな」  小太りがそう言いながら親の印である木札を剣士風大男の前に差し出す。  親がトータルでマイナスになった場合、その回のもっとも大きな目を出した者が親となるルールである。  大男が忌々しげに木札を受け取った瞬間であった。 「やあやあ諸君! ご盛況だな。結構結構」  階段を上がってきた男が場違いなほど明るい声を出した。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加