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全員の視線が一斉に入って来た男に集まる。
年の頃は30代後半くらいであろうか?
伸び放題の不精髭と、人をおちょくったようなまん丸の黒い遮光硝子の眼鏡が、見るからにいかがわしい雰囲気をかもし出している。
雪の多いここシルバスタ王国では、日光の反射から目を守るために遮光硝子の眼鏡をかける者はそれほど珍しくないが、夜中に室内で掛ける者はめったに居ない。
中途半端に伸びた長髪はボサボサで、朝起きたまま、まったく何の手入れもされていないのが一目でわかる。髭同様、オシャレで伸ばしているのではなく、単に面倒臭くて散髪をしていないだけであることは疑い様もない。
白い神官服を着ているところを見ると一応シルバスタ王国の兵士らしいが、何日洗濯をしていないのか聞くのが恐ろしいくらい汚れているうえに至る所皺だらけなので、ひどくだらしなく見える。
おまけに胸のあたりの布地の上で、全裸の巨乳娘の刺繍が大きく股を広げてウィンクをしている。
王国指定の神官服に剣や家紋等のちょっとした刺繍を入れている若い兵士は時折見かけるが、シルバスタ広しと言えどもこれほど悪趣味な神官服を着ている者は他に居ないだろう。
剣や家紋等の軽いお洒落な刺繍でも、神聖なる神官服に余計な刺繍など入れるべきでないという頭の固い司祭も多いのだ。ましてそれが股を広げた全裸巨乳娘では、ナメてるとしか言いようが無い。
「ちっ、賭場の禿鷹様のご登場か……」
頬傷の男は低くそう言うと、身体を少し左にずらして右側に人一人がギリギリ座れるほどのスペースを作った。
「ようタマノフ、大分御機嫌斜めじゃねぇか」
「ああ、今日はちっとばかりツイてないんでな」
タマノフと呼ばれた頬傷の男は苦笑しながらそう答えると、意味ありげに正面にいる小太りの男に視線を走らせた。
「なるほど」
”賭場の禿鷹”と呼ばれた男は小太りの傍に山積みになっている金貨を見ると、納得したように小さく頷いた。
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