第1章:賭場の禿鷹

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 長髪の親の後、タマノフの親が一発で潰れると、再び小太りの親になった。  一回目、二回目と、強い目で小太りの親がプラスになる。  小太りの親の三回目、初めてマッシーが動いた。  自分の前に金貨を5枚出す。 「ようやく来ましたか」  小太りが相変わらず笑みを浮かべながら言う。 「見物に来たワケじゃねぇからな」  マッシーも笑顔で応じる。  小太りの親は、確かに2回連続強い目で勝ってはいる。  が、目の強さの割りにはほとんど稼げていない。  子方の張りが小さい事もあるが、子方の方にも強い目が多く、引き分けが多かったせいもある。  これはツキが落ち目に向う前兆と考えることも出来る。    マッシーが慣れた手つきでサイを投げる。  5、5、6で合計16。強い目だ。  子方が全員終わって親の番になると、小太りが神妙な顔でサイを振りはじめる。  皆が注目する中、サイが投げられると、目は4、6、6の16。  ほぼ親の総取りだが、肝心のマッシーとは分れ(引き分け)である。  引き続き小太りの親で、マッシーは5枚の金貨をそのままにして、更に金貨を10枚追加した。  場が一瞬静かになる。場末の賭場で一度に金貨15枚というのは中々見られない勝負である。 「受けるかい?」 「受けましょう」  マッシーの問いに小太りが即答する。 「なんならもっと張っても良いんですよ?」  小太りが挑発するように言ってニヤリと笑う。  「ほう……そうかい」  マッシーが薄笑いを浮かべながら、汚れた神官服の内ポケットからなにやら金属性の物を取り出して床に置く。
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