第1章:賭場の禿鷹

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 マッシーがサイを拾い、両手で拝むように振り出す。 「6ゾロだ。頼むぜ!」  そう言いながら高く空中に放り投げる。  6のゾロ目は全ての目の中で最強だが、そうそう都合よくそんな目が出るワケがない。  一つ目二つ目は見事に6が出たが、最後の三つ目が5で止る。 「な、なんだと? なんで6ゾロじゃねーんだよ!?」  マッシーが怒ったような声を出す。が、6、6、5なら文句を言うような目ではない。  小太りが勝つにはゾロ目を出す以外にないのだ。 「チクショウ。なんてこったい……」  マッシーが本当に悔しそうな顔でサイを拾って小太りの前に差し出す。 「17なら文句はないでしょう? もうあなたの勝ちは決まったも同然ですよ」  そう言いながら小太りが置かれたサイを拾おうとした瞬間であった。  マッシーの手が素早く伸びて、小太りの手首をガッチリ掴む。 「なっ!?」  小太りが驚愕したように大きく目を見開いてマッシーの顔を見る。 「手を開いてみな」 「な、なんだと?」 「いいから手を開けや」  が、小太りの右手は、床に置かれたサイコロの数センチ上の空間で固く握られたまま動かない。  そのまま数秒間睨みあいが続く。 「タマノフ、こいつの手を開かせろ」  マッシーが言うな否や、タマノフが立ち上がり、小太りの右掌を力づくで開かせる。  すると、中から三つのサイコロが出てきた。  床に置かれている三つのサイコロと、小太りの掌から出てきた新たな三つのサイコロを見れば、何が行われようとしていたかは一目瞭然である。
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