忘れられない人

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れんの母親は真宏に会えないかと言ってきた。 『今は会いたくありません』 真宏は受話器を置きその場で座り込むと涙を流した。 そして真宏は涙を拭い電話を置いている台にもたれ左手の薬指にはめている指輪を見つめた。 『れん…会いたいよ…何で俺の前からいなくなったんだよ』 真宏は指輪に口づけをした。 その時、インターホンが鳴り真宏は驚いた。 真宏は立ち上がり玄関に行くとドアを開いた。 『おばさん…』 『店長さんから場所を聞いて…会いたくないって言われたけど、どうしても真宏君に会って謝りたかったの』 『帰ってください、今は誰とも話したくないんです』 真宏はドアを閉めた。 れんの母親は悲しげな顔でドアを見つめた。 『真宏君…ごめんなさい…』 『斉藤さんに何かご用ですか?』 『いえ…あ…れん…』 れんの母親は近づいてくる憐光の顔を見て驚いた。 『俺も斉藤さんに用があるから呼びますね』 憐光はインターホンを鳴らした。 家の中の真宏は『話したくないって言ったじゃないですか』と言いながらドアを開いた。 『杉田さん』 『急にいなくなったから心配しました』 『すみません…』 『仕事が終わったら食事に行きませんか、携帯に連絡をください』 憐光は真宏の返事も聞かず携帯番号を書いた紙を真宏の手に握らせその場から離れていった。 『れんにそっくり驚いた、真宏君』 『おばさん、もう来ないでください』 真宏はドアを閉めた。 れんの母親は帰ることにしその場から離れていった。 その様子を離れた所で店長の沢村がじっと見つめていた。 沢村は真宏の部屋に行きインターホンを鳴らした。 ドアが開き真宏が現れると沢村は笑みを浮かべた。 『真宏君』 『店長、どうしたんですか?』 『驚いたよ君が、俺が車でひいた男の恋人だったなんて』 沢村は家の中に入りドアを閉めるとナイフを真宏に突きつけた。 『店長…』 真宏はナイフを突きつけながら迫ってくる沢村から後ずさりをしながら離れた。 『その指輪は彼の贈り物かい』 『嘘ですよね、店長が…』 真宏はソファーにぶつかり倒れた。 すぐに立ち上がろうとした真宏は沢村に腕を掴まれ倒されるとナイフを突きつけられた。 『やめてください』 『真宏君、嘘じゃない君の恋人を車でひいたのは俺だ…』 沢村はナイフを置き真宏の服を引き裂くと乱暴した。 『やめてください』 真宏は叫びながら抵抗し沢村を突き飛ばすと沢村は顔つきが変わり真宏を殴り倒した。
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