忘れられない人

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特別室の真宏は窓際で立ったまま外を眺めていた。 『何でだろう、あの人に会いたい』 真宏は憐光のことを思っていた。 その時、ドアのノック音がし真宏は振り返り返事をした。 ドアが開き沢村が入ってきた。 『真宏君に会う資格ないと思うけど、君の恋人の憐光君が会えって』 『……』 真宏は沢村に近づき微笑んだ。 『あ…これシュークリーム』 沢村は箱を真宏に差し出した。 『ありがとうございます』 真宏は箱を受け取りベットに近づくとベットに座り箱を開けシュークリームを掴み食べ始めた。 『飲み物買ってくるね』 『…沢…村…さん…』 『え?今…』 沢村は真宏に近づき両肩を掴み倒した。 真宏は乱暴されたことを思いだし泣き叫んだ。 そこへ二宮と朝倉が現れ沢村を真宏から離れさせた。 『大丈夫ですか』 朝倉は怯える真宏を抱き締めながら背中をさすり落ち着かせた。 『話があります』 二宮は沢村を部屋から連れ出した。 『沢村さん、二宮先生』 袋を持って憐光は駆け寄った。 沢村は二宮と憐光に真宏に名前を呼ばれて驚き真宏の両肩を掴んだまま倒してしまい泣き叫ばれたと言った。 『男に倒されると乱暴されたことを思い出すんだ』 朝倉に抱き締められたまま真宏は涙を流した。『大丈夫よ、私がいるから』 ベットの上で朝倉は真宏が落ち着くまで抱き締めた。 ドアを開き二宮は朝倉に声をかけた。 『今いいかな』 『いいですよ、泣きつかれて眠ってますから』 朝倉は真宏をゆっくりとベットに体を倒し布団をかけた。 朝倉は二宮と沢村と憐光を部屋から連れ出した。 『今は会わない方がいいと思います、男性に触れられるのが怖いみたいです』 『明日、来ます、これお気に入りの真宏の服とズボンです』 憐光は袋を朝倉に渡すとその場を離れていった。 『俺も帰ります、真宏君にすまなかったと伝えてください』 沢村もその場を去ると朝倉はドアを開けたまま部屋に入り椅子の上に袋を置くと部屋を出てドアを閉めた。 『明日から彼は私が担当するわ、良いわよね』 『その方が良いかもな』 『私が居たら邪魔かしら』 『何言ってんだ』 慌てて仕事に向かう二宮の後ろ姿を見ながら朝倉は笑みを浮かべた。 ー特別室ー 夜中、真宏は椅子の上に置いてある袋の中から服とズボンを取り出すとパジャマを脱ぎ服とズボンを着始めた。
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