忘れられない人

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『死人のあんたが何でここにいるんだよ』 『真宏が本当に幸せになるまでは俺は成仏できない…俺が死んだせいで真宏は辛い思いをしてきた…今の真宏を幸せにできるのは君じゃない杉田憐光さんだ』 『あなたになんと言われようと俺は真宏さんに告白をします…仕事がありますので』 二宮は幽霊のれんに頭を下げると屋上のドアを開き階段を下りていった。 ひとりでに閉まるドアを幽霊のれんは見つめすぐに消えた。 その頃、真宏と憐光は食事を済まし私服に着替えると出掛けていった。 街中を歩きながら『どこに行こうか』と憐光は真宏を見た。 『勝手に病室を逃げ出し二宮先生に迷惑かけたから謝りに行きたい』 『そうだな…総合病院に行こう』 人に見られないように憐光は真宏の手に触れた。 真宏も見られないように憐光の手に触れた。 ー総合病院、診察室ー 仕事に身が入らない二宮は5人目の患者の診察が終えると看護婦の朝倉に『次の患者さんの診察は伊藤先生に頼んでくれ』と言って二宮は診察室を出て院長室に向かった。 ー院長室ー 二宮はドアをノックし『二宮です、今宜しいでしょうか』と言った。 『どうぞ』 中で院長が返事をすると二宮はドアを開き中に入りドアを閉めると院長に頭を下げた。 机で仕事をしていた院長は椅子から立ち上がり二宮に『座りなさい』と言ってソファーに近づき院長は座った。 『はい』 二宮はソファーに近づき院長と向き合うように座った。 『何か問題でも起きたのか』 『洋子さんのことで話があります』 『洋子のこと…喧嘩でもしたのか』 『洋子さんと結婚できません、俺に好きな人ができたからです…仕事も今日で辞めさせてください』 二宮はソファーから立ち上がり院長に向かって土下座をしながら『申し訳ありません』と言った。 『洋子は知っているのか君に好きな人がいると』 『はい、人物も知ってます』 土下座をしながら二宮は答えた。 『そうか…わかった…洋子との結婚は諦めるが病院を辞める必要はない、今まで通り働いてもらう良いね』 院長の言葉に二宮は顔を上げ『ありがとうございます』と言って再び頭を下げた。 『仕事に戻りなさい』 『はい』 二宮は立ち上がり院長に頭を下げると院長室を出ていった。
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