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「あれがほんとうに『止水』の第二段階なのか、それさえわからない。なんともこたえようがないよ。前よりはスピードも精度も格段に向上したとは思う。でも、まだそれだけだ。そっちのほうこそ、中華拳法の発勁(はっけい)だっけ、あれは使えそうなの」  ジョージが爽(さわ)やかに笑った。 「こっちのほうも皆目(かいもく)見当がつかない。師匠に一生使うなと念を押された技だし、相手が東園寺(とうえんじ)くんだからね。出会いがしらで試してみるしかない」  タツオはそっとジョージの横顔を盗み見た。不安を口にする割には、ひどく落ち着いて陽気でさえある。決戦に向かう前に自分たちの指揮官がこんな表情をしていたら、兵士たちはきっと安心するだろう。それに比べて自分はどうだろうか。シャワー室での発動訓練で、全身の筋肉痛がまだ残っている。気分は爽快とはほど遠かった。自分には指揮官の素質などないのかもしれない。進駐官には最初から向いていない性格なのだ。
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