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「うちの父のせいで東園寺家の近衛四家における席次が落ちたことは謝る。だが、その怒りをぼく以外の人間に向けるのはやめてもらえないか。例(たと)えば、ここにいるジョージやうちの班のテルには、『呑龍(どんりゅう)』のような危険な技を使用するのを自制してもらいたい。どうせ勝ち進めば決勝で、ぼくと当たるんだ。そのときには一切の手加減抜きで構わないから」  いきなり腹を抱えてカザンが笑いだした。天を仰ぎ、何度かたたらを踏んだ。人を不愉快にさせることについては、カザンには子どものころから天才的な力量がある。タツオは不機嫌になった。声を荒(あら)らげてしまう。 「なにがおかしいんだ!」  腹を抱えたままカザンがいった。 「おまえがなにも知らないからだよ。このおれが私怨(しえん)だけで、暁島会だの逆島(さかしま)家を追い落すと思っているのか。おまえを叩(たた)き潰(つぶ)すのは、この養成校で誰が一番強いか証明するためだけじゃない。もっと遠大な……」
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