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「忘れていた。タツオ、おれはおまえにさよならをいいにきたんだ。ある意味残念だが、おまえをおれの未来から完全に排除しなければならない。五体満足なおまえと会うのは、これが最後だろう。おれはおまえを進駐官として働けない身体にしなければならない。命まではとらないがな。おれだって鬼じゃない。サイコのやつがおまえに気があることもわかっている。妹の思い人の身体を破壊するのは、さして気が進まない。だが、おれの肩には日乃元の国体の未来がかかっている。先に謝っておく。すまないな、タツオ。おまえはどこか田舎(いなか)に引っこんで、おれを恨(うら)みながら一生を送ってくれ。おれはおれで救国の英雄として、進駐軍を背負っていくつもりだ。まあ、盆暮れにはなにかつけ届けくらいはしてやる。そのうち自分の運命の残酷さに気づくこともあるだろう。そのときにはおれはおまえには手の届かない高みに君臨しているだろうが。さらばだ、逆島断雄」
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