第1章…入春と四季

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そして先生にたっぷりの説教と課題を出されて僕は家に帰った。 玄関を開けただいま~と気の抜けたような声を出してみる。 返事は返って来ないが、そのかわり愛猫が足に擦り寄ってくる。そのまま彼女を抱き上げてリビングに入る。 一家が住めるような広い部屋はやっぱり僕には不釣り合いだと思う。 何もない何も聞こえない部屋は自分の存在をもっと小さく感じさせるようで。 それを紛らわせるようにソファーに腰かけ天井を見上げ今日学校であった事を一から思い出してみる。駄目だ嫌な思い出しかない。 「あ、そういえば」 放課後に彼に貰った名刺の存在を思い出す。 あの時は急いでいてポケットに入れっぱなしになっていた。 でもアイツがくれるものだからそんなに期待はしないが、貰ったものは一応気になるので見ておく。 「…アイツ」 何度も裏表見てみるが何もない真っ白だ。 何だこれは…まさか墨を垂らすと文字が浮かんでくるとか、あぶり出しとかそういうやつ?なわけないな。 やっぱりアイツは嫌だなんて思いながらも今僕が立っている場所はどこでしょう~か。 リビング?残念でしたキッチンでした。人間好奇心には勝てないと改めて感じた。皆はどうか知らないけど少なくとも僕はね。
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