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辺りは静寂に包まれてた。先程まで山中に騒々しく響き渡っていた作業の音が止んでいる。振り仰いだ頭上の雲一つない青空を、鳶が間の抜けた声で鳴いて飛び去って行った。
「やべぇな。間に合わなかったか」
口に出した言葉とは裏腹に、呑気な雰囲気の男が散歩でもするような足取りで山道を登っていた。古びた錫杖を手にしているのだが、着物の胸元をだらしなく緩めた姿は、仏に仕える者には到底見えない。一体何者なのか。
彼が目指しているのは採石場である。石工たちの休憩時間迄に辿り着きたかったのだが、間に合わなかったようだ。すでに時は正午を過ぎている。
日差しが照りつけ、汗が流れた。全身に汗をかきながら進み、ようやく開けた場所に出る。石切り場には、多数の人の気配があったが立っている者の姿はなく、皆が何故か横になって眠っていた。
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