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「……李樹さん、もっと他に言い方があると思う」
「関係無い」
「……………………………」
いや、関係無いってあんた…。
呆れて思わず溜め息がでる。
「薫さん、ルカさん。所長の躾しようよ…」
絶対必要だと思うよ。
夕方の呆れ具合から色々察した二人は静かに首を上下に振った。
「結論から言う。今回僕達は依頼人から騙されていた。だいたい依頼内容自体がおかしかったんだ」
確かにそうだ。
今回の依頼は依頼人はポルターガイストはないと言っていた。
ただ、視線だけを感じるからそれの正体を暴いて欲しい。
改めて思い返してみると依頼人が結構若かったような………あれ?依頼人の顔を思い返そうとすると靄がかかって思いだせない。
「ねえ、誰か依頼人の顔を覚えている人いる?」
何度考えても思い出せなかった俺は他のメンバーへと聞く。
「おいおい、そんな事も覚えてないのか?依頼人の見た目は……」
そこで薫さんの言葉が止まる。
バッと顔を上げ俺を見る。
「覚えてねえ…というより靄がかかって思いだせねえ」
薫さんの言葉を聞いた後、俺は目がスーッと細まるのが分かった。俺と薫さんの険しい顔を見た李樹が口を開く。
「薫と夕方が思っている通り僕も思い出せない。理由は二人と同じだ。ルカ、お前はどうだ」
「だめですね、全く思い出せません。」
李樹へと首を振りながらルカさんが言う。
「やはりな、僕もずっと考えていた。顔どころか名前すら思い出せないんだ」
「名前すらか、確かに思い出せねえな。って事はますます依頼人が怪しくなってきたな」
「怪しいなんてレベルの話じゃないよ…ねえ李樹これからどうするの?」
不安、困惑、焦り。
このままではまずい。
特に彰子だ。
表情にそのまま感情が出てる。
分かりやすい。
素直なのは良いことだけど、それは時に牙をむく。
不安や焦りは人から人へと伝染しやすい。
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