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数名の通行人が何事かと自分達に視線を寄せる。
注目を浴びて恥ずかしい気持ちもあったけれど、私は手を取った相手の方を噛み付くように振り向いた。
「何なの洋野!追い掛けて来ないでよ」
「話してる最中に逃げられたら自分が不愉快にさせたって思うだろ」
「逃げてないっ」
「じゃあ『走り去られた』でいい。とにかく、相手に嫌な思いさせといたままほっとけねぇんだよ」
「……」
次第に上がっていた呼吸が落ち着いてくると、気持ちの方まで落ち着いてくる。
だけどその直後、とてつもない不快感が奥底から沸き上がって身体中を駆け巡った。
や、ヤバイ…これは――。
「……気持ち、悪い…」
蚊の鳴くような声で呟いた途端、私は近くの植木にもたれるようにしゃがみ込んでしまった。
視界が歪んで目が開けられない。
幸いにも吐き気は催してないけれど、平衡感覚が一時的に無くなっているのは明らかだ。
「バカ。飲んだのに急に走るからだろ」
バカは余計だっての。
そう胸中で悪態をつきながら、自分も八木相手に呟いた15分前を思い出す。
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