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私達は歩き始めて、やがて見つけたベンチに二人で腰掛けた。
人通りはさっきよりも少なく、繁華街から外れているからか明るすぎず、かと言って薄暗くもなく丁度良い。
「ねぇ洋野」
「ん」
「女の子がオシャレ以外に髪を切る時ってどんな時だと思う?」
洋野が考えるポーズを取ると暫しの沈黙が降り落ち、ほどなくして洋野は弾かれたように顔を上げた。
「――失恋…」
「当たり」
明るく言った私とは対照的に、洋野の表情の彩度がみるみる落ちていく。
「実は両方とも失恋なんだよね、髪切った理由。
何かねーこれジンクスでもあるみたいで。伸ばして肩に到達したら振られるっていうね」
「…悪ぃ、俺本当、土足で踏み込んで荒らすような真似して…」
「やだ、そんな深刻な顔しないでよ」
酷く神妙な洋野の面持ちに、逆にこっちが申し訳なくなって気が焦ってくる。
「ていうか私も頭真っ白だったし。逃げ出したの無意識だったし。自分でも、あれ、私ってこんなに引きずってたっけって驚いてるくらいだし」
と、何故か必死にフォローしてしまう。
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