三度目の恋に触れる髪

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「…牧原。俺が入社した頃の事覚えてるか?」 「へ」 思わぬ突飛な質問に妙な声が出た。 「何、また」 相変わらず急な質問を投げるなと思っていると、じっとこちらを見つめる洋野の視線に気付き「覚えてるよ」と返す。 「牧原は、俺が自己紹介しても小中同じの洋野だって全然気付かなかったんだよな。珍しい苗字なのにさ。 二週間くらい経ってからの歓迎会でだっけ、ようやく気付いたの」 「そりゃ、まさか思う訳ないよ。実家出てるのに同級生が入社してくるなんて、想像出来る訳ないじゃん」 「でも、俺はすぐに分かった、牧原だって」 「え…」 「小学校の時と同じ髪型だったから」 真っ直ぐに送られる洋野の眼差し。 視線に、声に、息が止まってしまいそうな気さえする。 心臓の確実な機能を捉えても、落ち着きを取り戻したばかりの私の体でまた忙しく打ち始める。 「小学校の時つけてただろ、髪飾りっていうの。ちっこくてキラキラしてて」 「…うん」 「俺が入社した時も、同じ髪型で似たようなやつで髪束ねてた。だから、分かった」
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