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脳裏によぎる二年前の自分。
毎日早起きをして、時間を掛けてメイクして、髪も丁寧にブローしてた。
両耳の脇から少しだけとった横髪は、いつも後ろに流してヘアクリップでまとめていた。
ヘアクリップは挟む部分が櫛状のタイプで、オフィスでも使えるシンプルな黒色。
だけどさりげなくラインストーンが散りばめられていて、まるで星の輝く夜空みたいで気に入っていた。
あれから二年、一切出番を迎える事無く引き出しの中に眠ったままだ。
「…だから、そん時からずっと……いいな、って思ってたんだよ…」
「あげようか?どうせ使ってないし」
「髪飾り単体じゃねぇよ!『 牧原が』だよ! おかしいだろ、男の俺が髪飾りいいなとか!」
「……あ…」
そうか、と納得したところでハッとする。
待って。今何て――。
「ったく」
状況が飲み込めず呆然とする私の前で、洋野がガシガシ後頭部を掻いた。
「…つまり!そういう事!」
そう乱暴に言うや否や立ち上がってしまう。
「ま、待ってよ!」
今度は私が引き止める番だ。
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