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「待って。ちょっと混乱してんだけど…」
「……」
「…も、もし付き合うなら、これから髪伸ばした方がいいんだよね?」
「は…」
洋野が怪訝そうな表情を浮かべてしまったのも無理はない。
我ながらとんちんかんな質問だと思う。
洋野が自分に好意を寄せてくれているという事実と、告白の言葉と、過去の失恋が頭の中で入り乱れて上手く文章にならない。
「別に…髪型だけで好きになった訳じゃねぇし、付き合おうがそうじゃなかろうが、俺に牧原の髪型を指示する権利なんてないだろ。自分の好きにすればいい」
「…髪が肩まで伸びたとしても振らない…?」
「本気で言ってんのか?」
半ば呆れたような声。
私は静かに首を縦に下ろした。
「だ、だってジンクスあるんだもん。髪が肩まで伸びたら振られるっていう…」
「あのなぁ、何で告白の返事が未来で振るか振らないかを前提にしてんだよ。しかもただのジンクスだろ。
付き合ってほしいって思ってる相手に『もしかしたらジンクスどおり未来で振るかもしれないけど付き合ってよ』なんて言うバカな奴いる訳ねぇだろ」
「またバカって言った」
「牧原の事じゃねぇよ。分かれよ」
「分かってないのは洋野の方じゃん!」
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