三度目の恋に触れる髪

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人生で二度恋をした。 一度目。 言わずもがなの“初恋”は、小学6年生の時。 若くてそこそこ顔立ちが良く、女子児童や保護者のお母様方に人気のあった担任教師に恋をした。 先生に誉められたくて、率先して委員長に立候補したり、バトン部に入ってみたり、苦手な算数もいい点が取れるよう懸命に励んだ。 洗うのが楽だからとずっとショートカットだった髪を、伸ばし始めたのもこの頃だ。 お気に入りのヘアクリップを毎日つけて登校した。 迎えた卒業式。 クラスの各代表が体育館の壇上で授与された卒業証書は、残りは教室で担任から個々に手渡される。 誰にも打ち明けた事のない、ずっと秘めてきた想いを、卒業証書を受け取る瞬間に先生に伝えようと計画していた。 直接は難しいだろうから手紙で。 ラブレターは前日に何度も消しては書いてを繰り返してしたためた。
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