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「おい、人が一生懸命考えた解決策を何笑ってんだよ」
「ゴメンゴメン。だって想像しちゃって。長髪の洋野とか…営業なのに…うくく…」
口を覆った手の下で笑みを溢す私を、砂を噛んだような複雑な表情で見る。
「あはは、ゴメン。やっぱり洋野は優しいや。ありがと」
「いや…」
「前向きな発言のお陰で、そんなにこだわらなくていい事なのかもって思えてきたよ」
座りながら大きく深呼吸をして天を仰いでみる。
春に突入した夜空も、なかなか空気が澄んでいて綺麗かもしれない。
ほどなくして洋野と視線がかち合った。
ニッと笑うと、やれやれという感じで肩を竦められた。
そして彼は、私の前に立ったかと思うと片足だけひざまずき右手を伸ばして言った。
「牧原さん!ジンクス忘れるくらい、ずっとずっと長く、楽しくやっていきたいと思うのでよろしくお願いします!」
突然の敬語に目を丸くする私。
目の前に差し出された大きな手。
私が彼の手を握ると「っしゃー!!」と空いた片方の手でガッツポーズをとって、まるで少年のように破顔した。
また吹いた強い風は、やっぱり私の首筋を撫でていった。
Fin.
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