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お開きとなった店を出ると、少し強めの風が首筋を撫でた。
その肌寒さに、私は思わず腕に掛けていたスプリングコートを羽織った。
「えぇ~、奥さん風邪引いてるのぅ。ご飯作ってもらえないなんて可哀想~」
営業部の飲み会の二次会について、店先で相談している最中に飛び込んだ声。
カルピスの原液に練乳とピーナッツクリームを突っ込んだみたいな甘ったるさに、私は自分の眉間が寄ったのを自覚した。
世の男性全員がそんな猫撫で声で落ちると思ってんのか。
ていうか性別問わず引いてるって何で気付かんのだろ――いや、案外知った上での作戦なのかも。
それはそれで策士だけど、どっちにしてもこういうコの方が男性受けが良かったり、経験値も高かったりするんだよね。
羨ましくないって言ったら嘘になる。
ふわふわとした女の子らしさとか、小動物のような可愛らしさは私には決して醸し出せない雰囲気だ。
ひそめた眉を一瞬で元に戻して、猫撫でボイスの営業補佐とそれに言い寄られてる男性社員を見やった。
しかし男性社員――もとい八木(やぎ)の態度に私の心は更にささくれ立った。
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