163人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「え?あ、そうなんですか…」
やめてえ!と伸ばした手は宙を切り、珍しく乗り気な実由に電話に出られてしまってから5分程。
なぜか険しくなる実由の表情に無駄にドキドキ鼓動が早くなる。
(何を話してるんだろう?)
(余計なこと言ってないよね?)
(いや、余計なことって何。)
(まだ付き合ってからちゃんとデートもしてないんだし、余計なことなんて何もないじゃない?)
(強いて言うならば、彼からの告白への返答がしどろもどろだったことくらいしか知られて恥ずかしいことはないはず…)
(ていうか、いきなり友達が電話に出るとかあり得ないんですけど!)
(実由にとってはなんてことないだろうけど、一応相手芸能人だよ!)
「そうです、明日はパーティーを…」
「実由!」
「あ、ごめんなさい、美里が叫んでて聞こえな、あ、はい」
片耳を押さえながら電話口に返事を返す我が親友の表情はそれはそれは楽しそうで…。
こんにちは、美里の友人の栄枝実由です、美里とは高校の時からずっと一緒で、ええ、はい、なんてちゃっかり自己紹介までしてしまった実由は、「高橋さんのこと美里から聞いてます」といつもならば王子だなんだと名前でなんて呼んだことなかったくせに、初めて結婚したい男No.1の名字をちゃんと呼び、私を見てニヤリと笑ったのだった…。
(名前、ちゃんと覚えてたのか…)
あれよあれよと電話口で話が進んでいくのが分かる。
完全に明日、一緒に祝う方向になっていってる…。
「あのね実由!シンくんのこととかまずいから!流石に!」
「ええ、わかりました、では明日お仕事が終わったら美里に連絡してください。はい、はい、大丈夫ですよ」
(全然大丈夫じゃない…!)
「実由ーーーー!」
*
最初のコメントを投稿しよう!