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『もしもし、美里さん?』
宣言通り、夜に結婚したい男No.1から電話がかかってきた。
結局あのあと実由と色々話して、イルミネーションは来週に持ち越しになった。
クリスマスは過ぎてしまうけれど、この時期は年明けまでイルミネーションを続けるところも多いからそれを見に行けば良いんじゃないか、ということでこの話は着地した。
…そう。
ご察しの通り、明日の夜は結婚したい男No.1と二人で過ごす、ということだ。
(そして、私はこれからこの電話口でそのお誘いをしなければならない…)
実由はやっぱりドSだと思う。
この際、ここまで首を突っ込んでくるならば明日のこととか全部言ってくれれば良かったのに、それは美里が自分でお誘いしなきゃだと思ってわざとパーティーのことしか言わなかったんだよ、と嬉しそうに笑っていた。
本当は今晩一緒に誕生日を迎えれば、と言われたのだが、流石にそれは無理だと突っぱねて、明日の夜一緒に過ごそうと誘ってみる、とだけ答えた。
「遅くまでお疲れさま、まだ帰り道?」
『うん、でももう家の前です。あのね、美里さん、今日は年始の単発ドラマの記者会見があったんですけど…』
がちゃりと扉を開ける音に続いて、ただいまー、と間延びした声が会話の途中で聞こえ、バタバタと玄関で靴を脱ぐ音が話し声に混じる。
耳を澄ましていれば、いつも通り彼のお母さんであろう女性の「おかえり」って声と、「ご飯は?」と問う言葉が聞こえる。
『さっきちょっとつまんだからもう寝る、おやすみ!あ、美里さんごめんね、それで会場の控え室使えって言われて入ったら―…』
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