理想的なRatio.07

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  結婚したい男No.1の慌てる様子に、自分の口は“ え ”と“ なに ”ばかりをこぼし、頭には「?」が浮かんでいる。 急に騒がしくなった電話の向こうでは、バサバサと布が擦れるような音。 布団にでも寝転んでころがっているんだろうか。 続かない会話にどうしたんだろう、と耳を澄ませていれば、しばらくバサバサした後、静かになった。 「あ、あの、高橋さん…?」 と、思ったら今度はバタバタガチャンと足音と扉を開ける音と、早口で紡がれる言葉。 『ああ!』 「へっ?!」 『いや、待て、今何時、うわ、ダメだ!』 あーもう何やってんだ俺…。 そのつぶやきの後、電話の向こうはシーンと無音になり、少しの間をおいてから結婚したい男No.1はため息をついて、小さな声で私の名前を呼んだ。 『美里さん…』 「は、はい」 『今日、泊まりに行くの断られちゃったけど、何となく会いに行こうかなって帰りに思ったんですよ…』 用事あるって言ってたけど、行けば会えるような気がして…。 『でも家分かんないし、急に押し掛けても迷惑かなって思って自分家帰ってきちゃった…直感信じて言うだけもっかい言ってみれば良かった』 少しかすれた声で紡がれる言葉に、部屋の壁へと目を向ければお気に入りの壁時計はすでに23:30すぎを指している。 その時刻に、さっきのバタバタが何だったのか何となくわかった気がした。 「…会いたいって思ってくれたの?」 『何言ってんすか、ずっと思ってる、会いたいって』 自分の勝手な思いで用事があるなんて言ったことに、ちょっと罪悪感。 ごめんね、と謝れば、結婚したい男No.1は、ううん、と否定の言葉を返した後、このまま明日になるまで電話してていいですか?と至極やさしい声でぽそりとつぶやいた。 「うん…ありがと、」 08へ
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