理想的なRatio.08

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『美里さん、誕生日おめでとう』 二人で時計を見ながら、誕生日が来るのを電話越しにカウントダウン……なんて、生まれて初めてしてしまった、相原美里、三十路の夜。 (は、恥ずかしい…) 「あ、ありがと…」 恥ずかしすぎて、無駄にドキドキする。 声も震えちゃったりなんかして、緊張してるの丸わかりだ。 この件に関しての言い出しっぺは、もちろん結婚したい男No.1である。 『あと3分で美里さんの誕生日になりますね!一緒にカウントダウンしましょう!』 と、彼はまるでミレニアムイヤーの年越しでも迎えるかのようなテンションでそう言い放った。 良い年して何やってんだろうって途中、ちょっと現実に戻りそうになったのだが、電話の向こうで嬉しそうに『あと40秒ですよ!』と笑う声が聞こえて…誰も見てないんだし取り繕う必要もないか、と彼と一緒にカウントダウンを楽しんだのだった。 『最初は会えなくて残念だって思ったけど、こういうのもいいですね』 「うん、そうだね」 私が生まれてから、遂に30年…。 年々歳を取るのは普通のことなのに、なんで三十路の壁ってこんなにも大きいのか。 越えたくなかったものを越えてしまった感じで、一気に老けた気分。 見た目も心も数十秒前と大きく変わっていないはずなのに。 (あぁ、遂に三十路かぁ…) 『ね、美里さん』 なに?と返せば、結婚したい男No.1はくすぐったそうに笑ったあと咳払いをし、少しかしこまって言葉を紡いだ。 『いつ言おうかなって思ってたんですけど』 「なにを?」 『俺が、いつから美里さんのこと気になってたのか』 「へ?」 (ちょ、なんでいきなりそんな話に?!) カチコチと時を刻む時計の音が、なぜだかいきなり大きくなった気がする。 さらには自分の心臓の音までバクバクと聞こえてきそうな、感じ…。 いつからって、え? なんで急にそんな話になったわけ…。 ていうか、この流れ絶対私にもいつから俺のこと気になってた?とかって聞いてくる王道パターンのような気が…!  
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