第零伝:時の河を下り、また遡る

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「どうやら終わったようでありんすねぇ…」 ぱちん、と乾いた音が空間に響く。 声の主は銀色の髪を床下につくような長さまで伸ばしていて、その声色と合わせるとおそらく女性なのだろう。その右手には黒くて細い棒のような物を持っており、時折ぱちん、ぱちんと音が鳴ることから扇子の類だと思われる。 「やはり、あの娘では及ばなかったのでしょうなぁ。些か、荷が重いとは思っておりましたが…」 そんな女性の声に応じるようにして溜め息混じりの言葉を漏らすのは歳を召したと思われる1人の男性。春先にも関わらず暗黄緑の糸で編まれた帽子を眉毛が隠れるくらいに被っているからか、目元が分かりづらい印象を受ける。
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