第三章

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…それは、いつもと変わらない平日だった。 「おはようございます」 「あらあら、おはようございます。ゴミ出しですか?」 出勤がてらにゴミ出しをする僕に、近所のおばさんに声をかけられて応じる僕。 「えぇ。妻は朝ご飯の片付けですし、僕が代わりで」 「偉いわねぇ…良く出来た旦那様だこと」 …と言うか、銀杏のケモノ耳が引っ込まないから、代わりに今回は僕が出してるだけだ。 人で言う寝癖っ毛なので、時間が経てば引っ込ませると言っていたが、毎回「主様!耳が引っ込まぬ!」って慌てながら必死になる銀杏が、個人的に可愛いわけだが、これは彼女には内緒だ。 「あら?何かしら?」 「え?」 頭上を見上げるおばさんに、僕もその方向を見上げると、そこには一羽のカラスが電線にとまっていた。 「いやねぇ…ゴミを荒らす気なのかしら?」 「取り敢えず、念の為にネットを掛けておきましょう」 「ありがとうねぇ。荒らされたりしたら大変なのよねぇ…」 .
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