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「九十九神。これは、さっき銀杏が言った様に、物に魂が宿る神様の総称なんです。この手鏡は、少なくともあと1日で九十九神になる程の霊力が溜まっています」
「成る程なぁ…で、わざわざそれをホワイトボードで説明する必要とかあるのか?」
八畳程のリビングに、キャスター付きのホワイトボードにペンで書いて説明する風子に、銀杏は「この方が判り易いからな」と言った。
「そうそう。で、私達の見立てでは、九十九神になる日は明日です」
「そんな事が判るのか?」
「ワシや風子の様な神格は、九十九神より格上なのだよ。だからそれが判るのだ。寺や神社に奉納される鏡や仏具なのが、最も九十九神になりやすいがな。それ以外で九十九神になる代物は、寧ろ珍しいのだ。主様よ」
何の変哲もない手鏡が、魂を宿る九十九神になる。
僕は神や霊体とつくづく縁があるな。
「あ、でも九十九神になったとしても、何が起きるんだ?」
「起きはせぬよ。強いて言うならば、大事に使ってもらいたい…というトコだな」
「え?それだけなのか?」
そう僕が言うと、風子は天狗が持つ団扇をパタパタと顔元で扇いだ。
「そうですよ?現代社会では、目まぐるしく新しい物新しい物と入れ代わりが激しく、古くなればスグに捨てる…昔はニンゲンも物を大事にしてましたが、今ではそうもいきませんからね」
ホワイトボードを風子の神通力で葉っぱに戻すと、手鏡を指差した。
「まぁ、明日になれば九十九神になるのは間違いないですから、それまで気長に待てば良いですよ。九十九神になれば、この手鏡と話しが出来ますからね」
「と言っても、主様よりワシの様な美女とならば、話しも弾むかも知れんがな?」
「はいはい…ったく、決め付けるなよな」
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